LYMPHEDEMAリンパ浮腫

リンパ浮腫について

リンパ浮腫とは

リンパ浮腫 症例イメージ

リンパ液の流れ 症例イメージ

リンパ液の流れのイメージ

人間の体内では、静脈血の一部が組織に浸み出し、リンパ液として老廃物や細菌などの異物を回収しながらリンパ管内を通って再び心臓に戻ります。その流れの途中の関所のような役目を果たすリンパ節では、免疫細胞が回収された異物と戦い、リンパ液は綺麗な状態になって血液循環系へ戻っていきます。
このリンパ液の流れが何らかの原因で阻害され、心臓に戻ることなく体の中に蓄積することでむくみなどの症状が出現することを「リンパ浮腫」といいます。
リンパ浮腫は一度発症すると徐々に症状が悪化していき、重症化すると治療がとても難しくなるので、発症する前の対応や、発症した場合でも早期に治療を行うことが、とても重要になります。

リンパ液の流れ 症例イメージ

リンパ液の流れのイメージズ

原 因:原発性(もともとリンパ管の機能が弱いことに起因)のものを除くと、ほとんどの場合が乳がん、子宮がん、卵巣がんなどの手術、あるいは抗がん剤治療、放射線治療などにより、リンパ節やリンパ管を切除、または傷つけてしまうことで、リンパの流れが滞ることが主な原因です。

以下のような方は一度ご相談ください

  • 婦人系のがん手術や治療を行った
  • 腕や脚にむくみがある
  • 腕や脚がだるい、重く感じる
  • 腕や脚の動きに違和感がある
  • 腕や脚の左右の静脈に差異が見られる
  • 腕や脚を押すと戻りが悪い、またはくぼみになる
  • どうも最近疲れやすい

リンパ浮腫の検査

むくみの正しい診断が、リンパ浮腫治療の第一歩です。

PDE GEN3
ICG蛍光法 | 血管/リンパ管観察装置

ICG蛍光観察装置 PDE GEN3

「むくみ」に関しては、心不全や腎機能障害、深部静脈血栓症など、あるいは単に生活習慣や不摂生などによって生じることがあるため、医師の問診、血液検査や心電図、胸部レントゲン撮影によってリンパ浮腫の診断を行うことが一般的ですが、当院ではさらに高い精度で確定診断をするために、「PDE GEN3」という機械を使って「ICG蛍光観察(ICGリンパ管造影検査)」を行っています。
ICGリンパ管造影検査とは、インドシアニングリーン(ICG)という水溶性化合物を体内に注入し、特殊な観察カメラの近赤外光で励起・蛍光発光させることで、組織表面下のリンパ管の動態を安全かつ痛みなく観察する方法です。
LVA手術を行う際に、状態の良いリンパ菅を見つけるのにも有効です。

検査費用

PDE GEN3による検査は、自由診療となります。

ICGリンパ管造影検査
13,200円(税込)

GE Venue Fit™
高周波超音波検査機

高周波超音波検査気 GE Venue Fit™

高周波超音波、いわゆるエコーによる検査機器です。皮下の状態を侵襲なく安全に観察することが可能で、皮膚の下に貯留する液体を調べることで、リンパ浮腫の診断に役立ちます。

検査費用

Venue Fitによる検査は、保険適用となります。

リンパ浮腫の重症度分類

リンパ浮腫は一度発症すると、完治が難しく悪化してしまいます。重症化を進めないためにもご自身の重症度をしっかりと把握した上で、早期の治療と生活習慣の改善などがとても重要になります。また、リンパ浮腫に多く見られる合併症である蜂窩織炎にも注意が必要です。

上肢リンパ浮腫の重症度

リンパ浮腫 重症度分類 上肢リンパ浮腫 重症度分類 上肢

下肢リンパ浮腫の重症度

リンパ浮腫 重症度分類 下肢リンパ浮腫 重症度分類 下肢

ステージ 0
リンパ液輸送が障害されているが 浮腫が明らかでない潜在性または無症候性の病態
ステージ I
比較的蛋白成分が多い組織間液が貯留しているがまだ初期であり四肢を挙げることに より治まる。圧痕がみられることもある。
ステージ II
四肢の挙上だけではほとんど組織の腫脹が改善しなくなり圧痕がはっきりする。
ステージ II後期
症状がひどくなるとだんだんと組織の線維化がみられ、圧痕がみられなくなる。
ステージ III
圧痕がみられないリンパ液うっ滞性象皮病のほかアカントーシス (表皮肥厚) 、脂肪沈着などの皮膚変化がみられるようになる。

国際リンパ学会による病期分類

蜂窩織炎(ほうかしきえん):リンパ浮腫の合併症で、患部が熱を持って赤く腫れ上がるなどの症状が現れる細菌感染症です。
苦痛や高熱を伴い、多くのリンパ浮腫患者さんを苦しめていますが、LVA手術*により、発生頻度を抑えることが可能です。(*LVA手術は検査で手術適応を確認する必要があります。)
象皮病(ぞうひびょう):皮膚が分厚くなってイボやトゲ状になります。

当院のリンパ浮腫治療

重症度に応じて標準治療とされる「保存療法/複合的治療」と、場合によっては「外科治療(手術)」を組み合わせて治療を進めていきます。
まずはICGリンパ管造影検査、エコーによる検査などを行いながら、「正しい診断」でその症状を適切に見極め、患者様それぞれのご要望やADL(日常生活動作)を考慮して、最適かつ継続可能な治療方法を選択することがとても重要で、ご自身の目標や、重症度に合わせた最善の治療方法を提案し、サポートいたします。
治療は長期にわたる場合がほとんどです。長期的なフォローを視野に入れて、QOL(生活の質)の維持・向上を支えて参ります。

当院の治療のアプローチ イメージ当院の治療のアプローチ イメージ

保存療法/複合的治療

リンパ浮腫の軽度から中等度(ステージ 0〜I)の症例では、保存療法が主な治療方法となります。
保存療法とは手術を行わず、医学的に確立された治療を複合的に組み合わせて治療を進めていく方法で、4つの主な療法「スキンケア医療リンパドレナージ圧迫療法運動療法」などをそれぞれの症状に応じて実施していきます。
複合的治療には、リンパマッサージや、圧迫包帯、日常生活指導なども含まれ、これらの方法によりリンパ循環系の流れを促進し、余分な老廃物の排出を助けることで、むくみの緩和を図ります。

手 術(日帰りLVA手術)

リンパ管の流れが悪い状態が続くと、リンパ管は次第に拡張して逆流するようになり、リンパ液が心臓に戻りにくくなったり、皮下に貯留するようになります。この状態がさらに続くとリンパ管が閉塞して、全く流れなくなってしまいます。
2000年代より、マイクロサージャリーの技術を用いて、鬱滞・拡張したリンパ管を見つけて、近くにある静脈にバイパスを作って流れをよくする手術(LVA)が普及してきました。近年では有効性を示すデータが多数報告されるようになり、私達の過去の症例からは、リンパ管のダメージが少ない早期の段階で実施することが良い結果につながっていると考えています。
手術は従来入院で行っていましたが、検査方法や機器の進歩により、現在では局所麻酔で日帰り手術ができるようになりました。
(手術は保険適応です。)

長期的なフォロー

リンパ浮腫の治療は、長期的なフォローアップが不可欠です。身体的な負担やストレスを可能な限り軽減して治療を継続することで、QOL(生活の質)の維持・向上を図れるよう、スタッフ一同誠心誠意、お手伝いさせていただきます。